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簡易な発電システムの開発・研究
指導教員:機械知能システム学科 武田 紘一 教授
研究構成員: B02A034 澤井 元
B02A041 鈴木 健太郎
<研究の目的>
この研究の目的は、電気の通っていない山岳地域などでも電気が使えるようにすることである。そして、電気を起こすのに、自然エネルギを利用し、自然にやさしい発電機を考案・製作・試験運用し、最適な発電形態を模索することである。
<<ヒマラヤ・プロジェクト>>
ネパールのとある山村に、仏教寺院がある。その寺院は木造建築で、朽ち果てていたのだが、ドイツのNGOが再建をしてくれた。寺院に明かりを灯したいのだが、村には電気が来ていない。ローソクでは寺院が火災にあってしまう可能性がある。
自然に優しい発電形態の発電機をその村に持っていき、寺院に明かりを灯すことを目的としたプロジェクトである。
<水力発電実験に至るまでの経緯>
昨年の自主研究で、我々は風力発電について研究した。その中で、廃材を利用した簡易な風力発電装置を製作して、その発電機の能力を測定した。そして、風力発電について、以下のことがわかった。まず、風力発電機全体の構造として、羽根の直径が大きくなればなるほど、風が強くなるほど電力が大きくなる。そして、風の強さによって出力電圧と周波数が変化する。
・風速10m位からでないと発電をしなかった。
・風の強さによって出力電圧と周波数が変化する。
そして、以下のような結論が導かれた。
・定電源にはなりにくい。
・小型風力発電機では出力電力があまり大きくならない。
我々の考える発電機とは、人が簡単に持ち運べる大きさの発電機を用いて、100W程度の電球を灯せるような出力を有することのできるようにすることである。
<鳥海山の水を利用した水力発電>
・水力発電装置の設置場所の選定
私たちはまず水力発電装置の設置場所の選定を行った。
秋田県象潟町に、鳥海山からの湧き水を農業用水に使用するための水路がある。
湧き水はそのままでは農業用として使用するには冷たすぎるので、階段状の水路に流されている。水が階段から落ちるときの位置エネルギが熱エネルギに変換され、また太陽熱によって少しずつ暖められている。
その水路は階段状になっているので、水車の設置には好都合である。階段から落ちる水の位置エネルギで水車を回転させることができるからである。
その水路を管理している土地改良区の方に尋ねたら、快く水路使用を許可してくれた。

図1.設置する川 図2.設置する川の中からの様子
<水車の種類とその選定>
水車といっても、水車にはいろいろな種類がある。
水車の形態で、大きく2種類に分けることができる。まず、日本古来の水車ように、水車が剥き出しになっていて、水路から直接水を供給している水車を開放周流水車と呼ぶ。そして、管を利用して水流を落下させ、水車自体が自動車のタービンのように羽根車が装置の内部にあって外側から見えない、現在の大型・中型の水車発電装置を、管路型水車と呼ぶ。

図3.管路型水車の概略図 図4.開放周流水車の概略図
また、水車の主に使用するエネルギによっても、種類を分けることができる。
一般的に、水車の水のエネルギ変化は次の式で表される。
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Hz :水車本体の入り口、出口の垂直高さ[m]
v1、v2:流入、流出速度[m/s]
p1、p2:流入、流出圧力[Pa]
ρ :水の密度(=998[kg/m^3])
ここでは水車機械本体の入り口と出口で考える。この式の初項が位置エネルギ、第2項が速度エネルギ、第3項が圧力エネルギである。この式の初項、つまり、位置エネルギを主に利用している水車を、重力水車と呼ぶ。この式の第2項、速度エネルギを主に利用している水車を、衝動水車と呼ぶ。第2項と第3項、圧力と速度エネルギを利用している水車を、反動水車と呼ぶ。
衝動水車には、管路型水車ではペルトン水車やクロスフロー水車、ターゴインパルス水車などの種類があり、反動水車には、管路型水車ではフランシス水車やプロペラ水車などの種類がある。
どの水車を利用すれば一番効率がよいかということは、水車について書いてある本を見ると載っている。表1がそれである。この表をみると、今回の場合、水路にそのまま設置し、水の有効落差も1.5[m]なので、開放周流形水車を利用すればよいことがわかる。
|
水車名 |
有効落差(m) |
使用水車(m3/s) |
特徴 |
|
ペルトン水車 |
40〜300 |
0.05〜2 |
高落差 |
|
クロスフロー水車 |
2〜60 |
0.05〜4 |
中落差 |
|
フランシス水車 |
10〜300 |
0.2〜6 |
落差広範囲 |
|
プロペラ水車 |
2〜18 |
0.05〜6 |
低落差 |
|
開放周流形水車 |
3〜以下 |
0.1〜10 |
開水路 |
表1.水車の種類と最適使用方法
<水車の種類〜開放周流形水車〜>
開放周流形水車は、水が羽根車に当たる場所で以下のような種類を分けることができる。
下掛け水車…羽根車の外周に水流を当てることによって回転させる。
上掛け水車…水受けを持つ羽根車の上部に水を流入させて水の重量によって回転させる。
前掛け水車…水車の羽根車の中心付近の水車軸よりも低い位置に流入させて水の重量と衝動力を利用している。
胸掛け水車…水車の羽根車の中心付近の水車軸よりも高い位置に流入させて水の重量と衝動力を利用している。
したがって、下掛け水車は衝動水車、上掛け水車は重量水車、胸掛け水車及び前掛け水車は衝動水車と重量水車を掛け合わせたものといえる。表2に開放周流水車の種類と特徴を挙げる。
|
水車の種類 |
|
水車効率 |
比速度[m*kW] |
|
上掛け水車 |
高落差 |
0.60-0.75 |
0.6-4 |
|
上掛け水車 |
低落差 |
0.50-0.60 |
0.6-4 |
|
胸掛け水車 |
案内羽根付きゲートを持つもの |
0.60-0.70 |
1.5-4 |
|
前掛け水車 |
サージュビアン水車 |
0.70-0.80 |
2-35 |
|
前掛け水車 |
ツッピンゲル水車 |
0.60-0.65 |
10-36 |
|
前掛け水車 |
案内羽根付きゲートを持つもの |
0.65-0.70 |
4-30 |
|
前掛け水車 |
越流ゲートをもつもの |
0.60-0.65 |
|
|
前掛け水車 |
底流ゲートをもつもの |
0.40-0.50 |
|
|
下掛け水車 |
ポンスレー水車 |
0.70-0.75 |
12-60 |
|
下掛け水車 |
普通のもの |
0.30-0.35 |
8-36 |
表2.開放周流形水車の種類と特徴
・水力発電装置の設計?
次に、水力発電装置の仕様を考えた。基本の方針は、自動車が進入不可能な場所でも人間が容易に運ぶことができることと、容易に水力発電機を設置することができること、である。電力については、常時100Wを供給できる発電機にするということである。
まず、設置のしやすさを考え、水力発電装置は分解可能なものとした。そして、人間が運べる重さということで、分解した部品1つごとの重量が30kg未満になるようにした。そして、明かりを灯すため、発電出力を100Wに設定した。
<水力発電機の設計書>
渓流水車設計
B:水路板の横幅
H:水路板の箱高さ
D:水路板の落下距離
渓流の予想水量は![]()
全幅堰の流量Qは、
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ここで、Cは水力学によれば、次のようになっている。
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ただし
のとき
H=0.1[m]、B=0.5[m]、D=0.7[m]を代入すると、
Q=0.029[m3/s]
これは予想流量にほぼ同じである。
次に、水の持つエネルギーは
流量Q[m3/s]、有効落差h[m]、水車効率ηとすると、
W=gQhη[kW]
重力加速度g=9.8[m/s2]より、
W=9.8×0.029×0.7×0.5=0.1[kW]
を得る。
次に、この水が水車板に垂直に落下することによって水車を回転させる運動エネルギーとなる。発生する力をF[kgf]、流量をQ、堰の面積をS[m2]、水の単位体積あたりの重量をγ[kg/m^3]とすれば、S=0.05[m2]であるから、
水の速度vは
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を得る。よってFは
次にこの水が水車バケットに入るわけであるから、水車の回転力Tは水車の半径をRとすると、
T=F*R[kgfm]
この式にF=1.74[kgf]、R=0.25[m]を代入すると、
T=0.43[kgfm]
を得る。
さて、水車は15枚の羽根で構成すると考えれば、3枚の羽根が有効に働くと考えられるので、バケットに入った水の重量による回転力を計算する。
第1バケットのトルクは平均半径を0.2[m]、またバケット内の水の重量は2.58[kg]、角度補正値を0.91とすると、
T1=0.47[kgfm]
同様に、
第2バケットのトルクは平均半径を0.2[m]、またバケット内の水の重量は2.58[kg]、角度補正値を1.0とすると、
T2=0.516[kgfm]
同様に、
第3バケットのトルクは平均半径を0.2[m]、またバケット内の水の重量は2.58[kg]、角度補正値を0.92とすると、
T3=0.35[kgfm]
以上からはじめの衝撃トルクとバケット内の水重量トルクの合計は、
TTotal=1.33[kgfm]
を得る。
以上、トルクが決定されたので、先に求めた水のもつエネルギーから水車の回転数が求められる。
回転数をN[rpm]とすれば、
N=W*1000/(1.027*TTotal)
=0.1*1000/(1.027*1.33)=73[rpm]
さて、回転数は決定したが、スピードが遅いので増速機によって増速し、小型化を計ることにする。
いま、増速機としてサイクロ減速機(減速比1/8)を選択することにすれば、発電機回転数は
73*8=584[rpm]
となる。
いま、極数として16極を選択すると、
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発電機設計
最大回転数は上記のように得られたが、水量、機械効率、水管、設置などによって低下することも考えられるため、次の仕様とした。
|
容量:100[VA] |
電圧:100[V] |
相数:1[Φ] |
極数:16 |
|
回転数:450〜550[rpm] |
周波数:60〜70[Hz] |
||
毎極磁束Φは磁石特性から計算して
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毎極毎相の溝数を8と仮定すれば、全スロット数は
巻き線係数
と仮定する。
以上より、導体数Zは次式により計算する。なお周期は60[Hz]を採用する。
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毎溝導体数をZsとすると、並列回路数=a、毎極毎相の溝数=qとして、
(□数とする)
これより
コイルエレメント=56/2=28
・水力発電装置の一部を作成
水力発電装置の一部である、水路板を作成した。水路板は水車に水を供給するという重要な役割を担っている部分である。水の重みで壊れないような設計をして、製作に取り掛かった。水路板には、水が一定量以上流れてきても大丈夫なように、入り口の高さを制限した。
・水力発電装置の設置
水力発電装置の設置作業は11月10日に行った。水力発電装置を設置する場所は、道路から3mほど下にあり、そこまで水車の部品を持って行くのには足場が悪かった。また、発電機の仕様では水車部品1つの重さが30kg以内となっていたが、実際には30kgを超えてしまった部品もいくつかあり、羽根車など持ちにくい部品もあったので、設置作業はとても苦労した。

図5.水車設置の様子 図6.設置した水車
水力発電装置は11月11日から運転がはじまった。川の流量は、その川が人口河川で東北電力が管理しているため、設置をしてから川の水位が上昇したりほとんどなくなってしまったりで、予期せぬ出来事が続いた。川の水位は上昇してもよいようには設計してあったが、まさか川の水位が減少してしまうとは思わなかったので、川の水位が減少してしまった時には、さすがに思った出力を得ることはできなかった。
落ち葉が川にながれてくるようになった。水車内に小枝などのごみが入らないようにと、水路板の入り口に網を設置していたのだが、水に抵抗がかかってしまい、水の勢いが弱くなってしまったり、その網に落ち葉が堰きとめられて水路板に水があまり進入しなくなってしまったりした。

図7.設置した網 図8.溜まった落ち葉
<水車の出力測定>
水車の出力を測定するために、積算電力計と、電圧計、電流計を設置した。100V用の積算電力計を使用するにあたって、80V位の電圧でも動作するかを試験したが、問題なく動作した。詳細な値を知るためにテスターでも測定した。

図9.計測装置の外箱 図10.計測装置
水車の出力波形をオシロスコープでも測定した。このグラフから、発電機からの出力周波数は約48Hzであることがわかる。下のグラフは、1目盛りを500msに設定して、水力発電の出力を5秒間にわたる変動の様子を表したものである。このグラフを見ると、水力発電機はほぼ一定の値を出力していることがわかる。

図11.水力発電出力波形 図12.長時間の出力波形
<まとめ>
水力発電では、風力発電よりも一定の出力を得られることがわかった。
水力発電機の製作、設置、測定などを通して、理論値と実際の値の差や、設置の難しさ、製作段階になってはじめて出てくる問題など、普段机上では体験できないことを学ぶことができた。
自然河川の場合、水車で発電しようとすると、河川法などに引っかかりたちまち違法となる。灌漑用水路の場合でも農業用水の「目的外利用」ということで違法になるらしい。現行法では無断で水車を置いてはならないので、小型水力発電を設置するのには注意を払わなくてはならない。
<今後の課題・改善点>
・実際には1部品当たり30kgを超えてしまった。
・電力だけでなく水の流量、流速なども一目でわかるような装置があればよいと思った。
参考文献
・小型水力発電機製作ガイドブック、竹尾敬三著、パワー社、19−26頁
・流体機械工学、今木 清康 著、コロナ社、101,102頁
・これからやりたい人のための小型水力発電機入門〜身近な水力利用術〜、千谷博道著、パワー社
・分散型エネルギー〜マイクロ水車と水車〜、中島 大監修、http://www.ecology.or.jp/energy/9810.html