電子計算機工学講座では、「良質なソフトウェアシステムを簡単に作るには?」をテーマに、ソフトウェア工学、データ工学、人工知能など従来の情報科学の様々な側面を総合的に捉え、更に発展させた視点からの研究を進めています。
現在、コンピュータソフトウェアの設計・制作・保守を行うエンジニアは、あらゆる産業で非常に重要な役割を担っています。今後、高度情報社会の更なる進展に従って、コンピュータソフトウェアとその応用分野の本質を理解し、品質の高いソフトウェア作りを行うことの出来るソフトウェア専門家への需要はますます増大すると考えられています。
特に、記憶に新しい「西暦2000年問題」をきっかけに、ソフトウェアの信頼性や保守性などが非常に重要であることが再認識されています。本講座では、高品質ソフトウェア作成のためのフレームワークの開発という研究を通して、信頼性、保守性の高いソフトウェアに必要なシステム思考を、メンバーの一人一人が身に付けることが出来ます。
もしあなたが料理を作るのに、米や牛肉、醤油などを自分で栽培、飼育、醸造しなくてはならないとしたら、どんなに大変なことでしょう。また、機械に使われているネジが全部違う太さ、長さのものだったとしたら、その修理にはとてもコストがかかるでしょう。
コンピュータソフトウェアでも状況は同じです。日付に関する処理を行う機能を持つ「ソフトウェア部品」があって、多くのソフトウェアがその共通の「部品」を使って作られていたら、2000年問題への対応のうちの多くは、その「部品」を新しいものに交換するだけで済んだかもしれません。
本講座では、「ミドルウェア」と呼ばれる種類のソフトウェア部品を、アプリケーションソフトウェアの開発に役立てる研究を行っています。
信頼性 | 広く使用されている信頼性の高いミドルウェアを使用する事で、ソフトウェア全体の信頼性を高めることが可能 |
保守性 | 不具合の発生した部分を容易に発見でき、部品の交換で修理可能 |
性能 | 専門家の作成した高性能なミドルウェアを使用することで、ソフトウェア全体の性能の向上が可能 |
経済性 | 個々のソフトウェアを作成する際に書かなくてはならないアプリケーションプログラムの量が大幅に減少 → ソフトウェアの価格を抑えることが可能 |
互換性 | ミドルウェアの交換により、様々なハードウェア、様々なオペレーティングシステム上で動作するソフトウェアを開発可能 |
しかし、「ミドルウェアを使えば全て問題が解決する」という訳にはいきません。一つ一つのミドルウェアがいかに優れたものであっても、それらが互いにうまく連携して働き、ソフトウェア全体の目的を達成するようになっていなければ、せっかくのミドルウェアも宝の持ち腐れです。
本講座では、オブジェクト指向やエージェント指向などの最新のテクノロジを用いることにより、様々な目的に対応し、互いに協調して動作するミドルウェアの開発に取り組んでいます。