旬な研究の紹介

研究テーマ名 秋田型の循環型社会づくりに向けた菜の花多段階利用方式の
開発と実証
研究代表者 生物資源科学部
生物環境科学科 地域計画学講座
佐藤 了
秋田型の循環型社会づく りに向けた菜の花多段階利用方式の開発と実証

秋田県立大学「工農融合研究プロジェクト」
(研究補助金 5,000千円)

 近年、地域の農業および経済は、地域の持続的発展が危ぶまれるほどの危機的な状況にあり、歯止めをかけるには何らかの活性化方策が必要である。一方、現 代社会はいま、脱石油など消費型から循環型へのエネルギー・シフトが強く求められ、とりわけカーボン循環型で地域偏在性が小さいエネルギー源として植物由 来のバイオ燃料に注目が集まっている。

 こうした観点から、最近、菜の花の栽培や廃食油からのバイオ燃料の回収利用は全国で研究されている。だが、「栽培から最終消費まで多段階に地域内で利 用し、完結する実践例」はまだ少なく、加えてそのプロセス全体を一貫して研究支援する活動は極めてユニークなものである。これも、精力的な活動を展開する 「秋田菜の花ネットワーク」の自由な活動があり、これと農と工の両学部を地域内に擁する秋田県立大学が、緊密な協力体制をスタートさせたことで可能になっ たものである。

 だが、この体制は2006年11月にスタートしたばかりであり、目指す秋田型の循環型社会づくりには、解決すべき課題が山積している。そこで、主として 研究的なブレーク・スルーの可能性に着目して多段階利用方式の開発のポイントに及するならば、次のようなものとなるであろう。


菜の花(キザキノナタネ)


1.積雪寒冷地水田土壌に適する機能性菜種品種の選定と高度安定生産方式の確立

 まず、@寒く雪の多い地域の水田土壌に対する菜の花(菜種)を選ぶこと、A菜の花が連作障害に弱いアブラナ科作物のため、その障害を回避する方策を確立する必要がある。
 このため本研究プロジェクトでは、@経験豊富な東北農業研究センターとの共同研究によって、干拓地の大潟キャンパスに4ha強の菜の花を作付して栽培法を確立するとともに、JAS有機栽培で市場評価等にも結びつけようとする一方、A組み合わせ作物選定にも観光資源としての視点も加えて、当初から連作障害の回避と景観等にも配慮して探索しており、いくつかの有望な作目を見出しつつある。


2.菜種の低コスト搾油・精製方法の開発

 次に、@コストをかけず、ローテク活用によって高性能の菜種搾油すること、A食用油としての機能性等を評価する必要がある。本研究プロジェクトでは、当 面、小坂町がバイオマス・タウン構想に基づいて建設する搾油所における実践を通じて機能性評価を進めることにしている。


3.寒冷地用バイオ燃料の開発及び実用化試験

 さらに、廃食油から寒冷地に合ったバイオ燃料を開発し、実用化する必要がある。そこで本研究プロジェクトでは、ネットワークの中心メンバーの一つである 秋田運送(株)が先行して実用化しているバイオ燃料の性能と収集・製作システムを分析・解析して、その精度の向上に資するとともに、学内に於いては、大潟 キャンパスのフィールドセンターでの農業機械の運行燃料をバイオ燃料に切り替えることを目指すことにしている。


廃食油燃焼試験の様子


4.積雪寒冷地に適した菜の花の多段階循環利用方式の実証と評価

 菜の花の多段階循環利用は、淡路和則名古屋大学助教授によると、なたね生産を担当する個別経営に10a当たり23,596円を支援することにより、その子実、搾油、副産物、BDF製造の多段階循環利用から地域レベルで総額55,649円というほぼ2倍の付加価値が形成され、「個別経営レベルへの支援が地域レベルのより大きな付加価値形成に結実する」ところにその大きな特色がある。こうした菜の花の多段階付加価値形成力を効果的に活かして地域活性化と循環型社会形成の達成という当初の目的に接近していく必要がある。

 このため、@菜の花の多段階に及ぶ物質循環と経営収支を算定することは無論のこと、A地産地消(地域内循環)視点に基づく地域特性に合った販売ルートの開発や事業化など、製品化・事業化・産業化に結びつく販売戦略の検討とともに、B家庭用廃食油の回収方式の検討などが活性化ならびに循環型社会形成の前提として極めて重要である。

 そこで、本研究プロジェクトでは、小坂町や美郷町をフィールドにこれらの課題への取組みを支援するとともに、現地に即して戦略を検討し、提言していくこととしている。


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