【プレスリリース】なぜ温暖な森林は生産量が大きいのか?

 生物資源科学部生物環境科学科の星崎 和彦 教授(森林科学研究室[専門分野:森林科学、生態学])らの国際共同研究チームは、東南アジア〜東アジアの60カ所の森林の継続調査データを用いて、樹木種レベルの年間炭素生産量が森林の炭素生産量をどのように構成しているかを解析し、温暖な気候の森林では、種数の増加に伴って、低木種の比率が高くなるために、森林の生産量が大きくなることを、世界で初めて解明しました。
 星崎教授は、本論文に使われた60箇所の森林調査区のデータに、星崎教授が中心となって調査してきた岩手県カヌマ沢試験地のデータを提供しています。
 

プレスリリース資料

「なぜ温暖な森林は生産量が大きいのか?  
 ―樹木群集の炭素量分布が森林の生産量に貢献する―(令和5年3月13日付け) 」
 

星崎 和彦 教授のコメント

 森林の炭素固定機能が熱帯から亜寒帯にかけて明確に低下することは以前から知られていました。今回の国際共同研究では、生育地の気温にかかわらず、樹体の大きな高木種よりも、小さいまま一生を終える低木種のほうが個体重量あたりの炭素固定力が大きいことを発見しました。これは、熱帯林の炭素固定機能が高いのは、現存量の大半を占める巨木たちによるものではなく、むしろ低層から中層にかけて極めて多数の小型樹種が共存しているから、つまり森林の群集構造と種の多様性が大きく寄与していることを示す成果です。
 今後は、各構成種の生産力が推定できるようになったことで、森林の長期観測を通して見えてくる動態(種ごとの死亡、加入、繁殖等)に生産力の違いを加えて、秋田の森林の将来の姿を推定するシミュレーションに役立てたいと思います。また秋田県とその周辺の各調査地のデータを使って、ブナ林や天然スギ林のように高木層が比較的単調な森林と、渓流沿いなどに点々と残る種多様性の高い森林を比較することで、今回の発見の一般性を確かめてみたいと思っています。
 

マレーシア・パソの熱帯多雨林