補足



分子生物学に厳密な定量性を

あるいは真面目に測定してきた研究者は怒るかもしれませんね。

そこをこらえて聞いてほしいのですが、
いままでわれわれが調べてきたデータの多くは、定量性を欠いていました。
少なくとも正確ではなかった。---ノザン法や、あるいはqPCRだって。
これについては、やがてこのサイトのなかで
説明することを約束いたします。

さて、定量性がないと、知見を統合することができません。
定性的な説明は、データの量が少ないときは便利なんですが、
データが増えれば混乱を招きます。

ゲノムは複雑で、その測定データの量はどうしたって
巨大になります。そこから矛盾なく知見を引き出し、
それを統合できない限り、ゲノムをデコードするのは
無理です。つぎはぎだらけの、
カオシックな知見になっちゃいます。

しかしもちろん、生命はカオスではありません。
それはよく統御された有機体です。
数学のカオス理論を、
いろんなものにあてはめるのは楽しかったのですが、
少なくともパラメータが堅持されない系では
妥当なモデルではないでしょう。
どんなに撹乱されたって、子供は育ってくるもんですよ。


研究は細かい努力の蓄積です。
だからその努力を間違いなく集積すること---
知見を統合することが、
とても大事です。
その集積のために定量性は欠かせません。
解釈にあいまいさを残してはいけません。

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03 Jan 2005
小西智一

秋田県立大学
生物資源科学部/地域共同研究センター