1プロでは畑雑草の生態の解明、および畑雑草の制御技術の開発に取り組んでいます。

畑雑草制御に関する基礎的研究 (露崎)


1)難防除雑草イヌホオズキの生態解明
 イヌホオズキは、ダイズ圃場で最も防除が困難な雑草の一つです。イヌホオズキの出芽の時期などに関する生態的特性を把握することで、効率的に制御するための知見を得ようとしています。

2)緑肥作物を用いた雑草制御技術
 緑肥作物には、その土壌を覆う能力やすき込まれた後に作られる物質をつうじ、雑草を制御する働きがあります。そのような緑肥作物の雑草制御の能力について、複数の緑肥作物の間で比較しています。作付け体系に緑肥作物を組み込むことで、耕種的な雑草制御技術を開発したいと考えています。写真は夏緑肥作物(ソルガム、ヒマワリ、セスバニア)が植栽されている試験圃場の様子です。

























緑肥植物の雑草抑制効果を見るために試験区を作り緑肥植物を栽培している様子

参考文献
露崎浩・望月沢子(2014)オオムギの植栽・収穫後すき込みが後作物の成長および収量に及ぼす影響,日本作物学会東北支部報 57:11-15.


3)難防除雑草ギシギシ類の生物的制御技術の開発
ギシギシ類(エゾノギシギシ、ギシギシ)は畑地や放牧地などに生える防除が困難な雑草です。その雑草の茎葉を好んで摂食する昆虫「コガタルリハムシ」の生態の解明と人工的な繁殖・飼育技術の開発に取り組んでいます。これらの知見や技術を利用して、天敵生物を用いた環境保全型の雑草制御技術の開発を最終的に目指しています。


大豆圃場での 畑雑草の研究  (保田)

第二次世界大戦以降、日本では畜産が振興されました。しかし、日本の国土は狭く、家畜のエサとなる穀物飼料はおもにアメリカ合衆国から輸入されました。穀物飼料は人が食べるムギやダイズとは異なって粗放的に作られるため、その中には多くの外来雑草の種子が混じっていました。通常、エサとともに家畜に食べられた雑草の種子は、胃で消化されたり、堆肥化の過程で死滅することになります。しかし、十分に堆肥化されていない未熟堆肥が耕地に還元されることもあり、外来雑草の種子が生きたまま耕地に散布されることになりました。そして、それら外来雑草は急速に日本国内で拡散し、大きな問題となってきました。
その外来雑草にアメリカアサガオ、マメアサガオ、ホシアサガオ、マルバルコウ、マルバアサガオなどの帰化アサガオ類と呼ばれる一群があります。それらは除草剤が効きにくく、大豆畑での強害雑草となっています。帰化アサガオ類の起源地は熱帯アメリカということもあり、秋田県などの高緯度地域の耕地には侵入していませんでした。しかし、最近では秋田県の大豆畑でも確認され、分布が拡がってきています。この帰化アサガオ類の分布や生態的特徴を解明し、侵入防止や防除に生かそうとしています。













(左)大豆畑に侵入し、大豆(緑の濃い植物)を攻めているアサガオ(色の薄い植物)。(右)大豆圃場で生育しているマルバコウ。

参考文献
保田謙太郎(印刷中)帰化アサガオ類のつくる自然への功罪、『照葉樹林文化論の現代的展開 Ⅱ』 山口裕文ら編著 北大図書刊行会 
保田謙太郎 (2012) 石川県から青森県までの日本海沿岸地域における帰化アサガオ類(Ipomoea spp.)の分布. 雑草研究 57(3):123-126.
保田謙太郎・住吉正 (2010) 北部九州の大豆畑への帰化アサガオ類(Ipomoea spp.)の侵入状況. 雑草研究 55(3):183-186.
住吉正・保田謙太郎 (2011) 帰化アサガオ類に対する各種除草剤の防除効果. 日本作物学会九州支部会報 77: 47-51.
保田謙太郎(2010)暖地大豆畑での帰化アサガオ類の発生状況についての現地調査と大豆調製施設からの夾雑物調査 植調 44(8):291-295.

雑草の文化的側面の研究 (露崎)

雑草には害を及ぼすだけでなく人生に潤いをもたらす効果(挿絵参照)や子供の遊びを創る効用、また食用として利用されるなど様々な側面もあります。



























露崎浩(2010)生活文化の視座から雑草をみる,人間・植物関係学会雑誌 9(2):1-6.